毎日立つ台所は、料理をする場所であると同時に、心と身体を養う食事が生まれる場所でもあります。
アーユルヴェーダでは、何を食べるかだけでなく、どんな気持ちで料理をし、どのような環境で食事をつくるかも大切に考えます。
今回は、そんなアーユルヴェーダの台所の考え方と、心地よい台所づくりにつながる調理器具の選び方をご紹介します。
アーユルヴェーダが大切にする「台所」
アーユルヴェーダでは、食事は単に空腹を満たすためのものではなく、心と身体、そして生命を養う大切なものと考えられています。そのため、食事が生まれる台所もまた、毎日の健康を育む大切な場所とされています。
また、料理は単に食材を調理する作業ではありません。
自然からいただいた恵みを、生命を支える一皿へとつないでいく営みでもあります。
台所では、「火(アグニ)」というエネルギーが働いています。
以前の記事では、アグニを「消化のエネルギー」とご紹介しました。
しかし、アーユルヴェーダにおけるアグニは、それだけではありません。
私たちの体内で食べ物を消化・吸収する力であると同時に、台所では食材に火を通し、その力を引き出して、身体を養う食事へと変えていく「変化」の象徴でもあります。
食事をつくるという祈り
インドでは「アンナプルナ(Anna purna)」という、食と豊かさを司る女神が古くから大切にされてきました。
食べ物は恵みであり、それをいただくことは命をいただくこと。
だからこそ、料理をすることもまた、その恵みを大切に受け取り、次の命へとつないでいく営みとして考えられ、日々の食事づくりの根底に流れています。
一方、日本にも、古くから竈(かまど)の神様や火の神様を大切にする文化があります。
昔の家では台所に神札を祀り、火を丁寧に扱う習慣がありました。
遠く離れたインドと日本ですが、「食事が生まれる場所を大切にする」という想いには、どこか共通するものを感じます。
私がアーユルヴェーダを学んだ先生は、料理を始める前にマントラを唱えていました。
日本では、お祈りを捧げるというと馴染みがないように感じるかもしれませんが、思い浮かぶ光景があります。
私の母は一緒に台所に立つと、鍋をかき混ぜながら「おいしくな〜れ〜」と、「おまじない」をかけてくれます。もちろん失敗することもありますが、そんな日も「あら、今日はおまじないが効かなかったわね」などと言って家族を笑顔にしてくれます。
私はアーユルヴェーダを学んで初めて、「あれも一つのお祈りだったのかな」と思うようになりました。
このような「美味しくなりますように」や、病気の人には「早く良くなりますように」と、
自然と想いながら台所に立つことも、お祈りのひとつだと感じています。
ポジティブで優しいエネルギーで台所に立つのに、高価な道具を揃える必要はありません。
自分が愛着を持てる心地よいと感じるものを選び、大切に手入れをしながら長く使うこと。
それもまた、アーユルヴェーダが大切にする「暮らしを整える」という実践の一つなのだと思います。
調理器具を選ぶ3つのポイント
天然素材を選ぶ
- 木製:使うほどに手に馴染んできます。
- ガラス製:用途によって耐熱性のものもあると便利です。夏にガラス製の食器は涼しさもプラスしてくれます。
- ステンレス製:熱にも強く衛生的にも使い勝手が良いのでお勧めです。
- 鉄製:微量の鉄分が取れます。少し手がかかりますがお勧めです。
長く使えること
使い捨てではなく「育てながら使う」ことを意識できるものを選んでみてください。
愛着が持てるものを選ぶ
衛生や機能面も大切ですが、お気に入りであることが大切です。
使うたびにウキウキするようなそんなお気に入りをキッチンに集めてみてください。
